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KOJI NISHII 3rd

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西井浩二 Koji Nishii

CEO/Project Manager/Designer

インタビューの第三弾です。

はじめに ── AIはオフィス設計をどう変えるのか

最近、オフィスデザインの分野でも「AI活用」という言葉を耳にします。実際、現場ではどのように使われているのでしょうか?
西井
「数年前までは“これからの技術”だったAIが、今では実務で当たり前に使うツールになっています。特にレイアウト検討や動線分析など、オフィスづくりの初期段階での使い方が進化しましたね。」

スピードと精度が変わった

── 具体的には、どのような変化がありましたか?
西井
「例えば新しいオフィスのレイアウト案を作る場合、以前はヒアリングして図面を描き、修正を繰り返し…と数日から数週間かけていました。でも今は条件を入力すれば、AIが数時間で複数案を提示してくれます。しかも“社員の動き方”や“席の稼働率”といったリアルデータをもとにした提案です。」

── 感覚や経験だけに頼らない判断ができるんですね。
西井
「そうです。もちろん経験や勘も重要ですが、データで裏付けられると説得力が違います。経営者や総務担当者にとっても、数字を根拠に説明できるのは安心材料になります。」

 

 

B社 会議室改革 ── AIが見抜いた“隠れたムダ”

── AI活用の事例として具体的にもう少し詳しく教えていただけますか?
西井
「はい。B社は急成長中のスタートアップで、オフィスは常に活気がありました。でも、会議室が足りないという相談を受けたんです。実際に予約システムを見ると、常に予約が埋まっている状態でした。」

── それは確かに不足しているように見えますね。
西井
「そうなんです。普通なら『会議室を増やしましょう』という結論になりがちですが、B社は賃貸面積が限られており、増やすのは現実的ではなかった。そこでAIを使って実際の利用状況を分析することにしました。」

課題の発見

── 分析ではどんなデータを集めたんですか?
西井
「まずは会議室の予約データと入退室ログを突き合わせました。それに加え、会議室内のセンサーで実際の在室人数や利用時間を測定しました。すると、予約は1時間単位なのに、実際は10分以内で終わっている会議がかなり多いことが分かったんです。」

── 予約と実利用に大きなギャップがあったわけですね。
西井
「はい。これは“会議室の用途”が予約システム上では見えないことが原因でした。ちょっとした打ち合わせや電話でも、大会議室を押さえてしまっていたんです。」

施策の立案

── そこでどんな改善策を?
西井
「まずは短時間利用向けの小型ブースをオフィス内に複数設置しました。壁と天井がある簡易防音の1〜2人用スペースです。そして大会議室はオンライン会議や複数部署の合同ミーティング専用に用途を限定しました。」

── 予約ルールも変えたんですか?
西井
「はい。短時間利用は30分単位で予約できるようにし、逆に大会議室は1時間以上の利用に限定。これによって、会議室の種類ごとに用途がはっきり分かれ、使い方の無駄が減りました。」

改善後の効果

── 結果はどうでしたか?
西井
「まず、大会議室の予約が取りやすくなりました。以前は3日先までほぼ満席でしたが、導入後は翌日でも予約できる日が出てきました。また、小型ブースの稼働率は常に80%以上で、短時間会議やオンライン通話が快適にできるようになったと好評です。」

── 社員の反応も良かったんですね。
西井
「ええ。特に『ちょっと声を出す作業』や『短い打ち合わせ』のために場所を探すストレスが減ったと喜ばれました。結果的に、社員同士のコミュニケーションが増え、生産性も上がったんです。」

学びと応用

── この事例から学べることは何でしょう?
西井
「“不足している”と思える設備でも、実は使い方の見直しで解決できる場合があります。AIは、その“隠れたムダ”を数字で可視化してくれる。特に成長中の企業ではスペースを増やすより、運用ルールとレイアウトの最適化の方が効果的なことも多いです。」

── なるほど。これなら多くの企業で応用できそうです。
西井
「そう思います。例えば集中スペースや休憩エリアも同じで、利用データを取れば“足りないのか、使われ方が間違っているのか”がはっきりします。そこを見極めて改善するのが、これからのオフィス設計ですね。」

 

 

 

 

AIと人間の役割分担

── こうした分析や提案がAIでできると、人間の仕事は減ってしまうのでは?
西井
「むしろ逆です。AIは効率化のための“最適解”を出しますが、企業らしさや心地よさは作れません。AIの案をベースに文化や理念、社員の価値観に合わせて調整するのがデザイナーの役割です。」

── 具体的には?
西井
「例えばAIが『この動線が最短』と提示しても、その通路に植物やアートを置けば歩くのが楽しくなる。効率はわずかに下がっても、日々のモチベーションが上がる方が価値がある場面もあります。」

未来のAI活用

── 今後はどんなAI活用が進むと考えますか?
西井
「可変型レイアウトや、会議室がそのままオンライン配信スタジオになる仕組み、温度や照明をAIが自動調整する環境制御などは確実に広がるでしょう。オフィスが“固定された箱”ではなく、使う人や状況に合わせて変化する“生きた空間”になると思います。」

AI活用の注意点

── 逆に注意すべき点はありますか?
西井
「AIは便利ですが、データの取り方や期間で結果は変わります。数字に出ない心理的要素もあるので、AIの提案はあくまで参考。最終判断は人間がするべきです。」

AI時代だからこそ必要な未来のオフィスづくり

オフィスの役割が変わった

── コロナ禍以降、オフィスの位置づけも変化していますね。
西井
「以前は“必ず行く場所”でしたが、今は“行きたい理由がある場所”になりました。だからこそ、その会社らしい魅力や価値を空間に持たせることが重要です。」

未来オフィスのキーワード

── これからのオフィスづくりで重要なポイントは?
西井
「3つあります。まず“可変性”。チームやプロジェクトに合わせてレイアウトを変えられること。次に“体験価値”。香りや照明、素材感など五感で感じる価値。最後に“コミュニティ形成”。偶発的な交流が生まれる仕掛けです。」

具体的なレイアウト案

── 具体的にはどんなレイアウトが考えられますか?
西井
「交流重視型は中央に共有ラウンジを配置し、部署を超えた会話を促します。集中重視型は個人ブースを多めにし、会議室はオンライン対応を強化。ハイブリッド型は交流エリアと集中エリアを明確に分け、利用目的で選べる構成にします。」

リアル空間の強み

── リモートやオンラインが進んでも、リアルオフィスの価値は残りますか?
西井
「もちろんです。オンライン会議では伝わらない空気感や温度、雑談から生まれるアイデア…。リアル空間はそういう交流を最大化できる場所です。」

 

 

 

 


── 実際に、未来のオフィスづくりの思想を反映させた事例はありますか?
西井
「はい。広告代理店C社の事例があります。ここは部署の数が多く、それぞれのプロジェクト単位で動くことが多い会社でした。結果として、他部署との日常的な接点が少なく、交流が限定的になっていたんです。」

── どんな課題があったんでしょうか?
西井
「大きく3つですね。
1つ目は交流機会の不足。社内のコミュニケーションはメールやチャットが中心で、雑談や偶発的な会話がほとんどなかった。
2つ目は発想の固定化。クリエイティブな仕事なのに、新しい視点や異業種的なアイデアが入りにくかった。
そして3つ目は動線の問題。部署ごとにエリアが分かれていて、そもそも“他部署とすれ違う瞬間”がほとんどなかったんです。」

── そこで、どのような解決策を提案されたんですか?
西井
「オフィスの中央にカフェカウンターを設置しました。ポイントは単なる休憩スペースではなく、“全員が必ず通る場所”として設計すること。各部署からコピー機や郵便棚に向かう動線を、このカフェカウンターの前を通るようにしました。」

── 動線まで考えたんですね。
西井
「そうです。意図的に動線を交差させないと、偶然の出会いは生まれません。さらに、カウンターの周囲にはフリーアドレス席を設け、そこに座って作業をしていると自然と声をかけられるようにしました。」

── 家具や雰囲気づくりにもこだわったのでしょうか?
西井
「もちろんです。カウンターは立ち話もできる高さにして、椅子に座るほどの時間を取らずとも会話ができるようにしました。素材は木目とファブリックを基調にし、照明は暖色系。『ちょっと立ち寄りたくなる』雰囲気を意識しました。さらにコーヒーマシンやスナックコーナーも併設して、立ち寄るきっかけを増やしました。」

── 実際の効果はどうでしたか?
西井
「劇的でしたね。まず他部署との会話が毎日発生するようになりました。以前は週1〜2回程度だったのが、導入後は1日数回に増えています。さらに雑談から新しい広告企画が生まれることも多くなり、社員アンケートでも『偶然の出会いから得られたヒントが業務に活きた』と答えた人が、導入前の34%から71%に増えました。」

── 数字でも効果が見えるのはいいですね。
西井
「はい。それと心理的な距離の縮まり方も大きかった。経営層や管理職も自然にカウンターに立つので、若手が気軽に話しかけられる空気になりました。その結果、若手からの提案数も増えました。」

── この事例から学べるポイントは何でしょうか?
西井
「“交流を増やす”というとイベントやワークショップを思い浮かべがちですが、実は偶然会う確率を設計で高める方が持続的なんです。C社ではカフェカウンターがその象徴になり、オフィスの文化そのものが変わりました。」

 

 

 

 

 


西井が描く理想のオフィス

── 最後に、西井さんが考える理想のオフィスとは?
西井
「“変わり続けられる空間”ですね。固定された完成形ではなく、人や働き方の変化に合わせて柔軟に進化できること。そしてデザインと機能が自然に融合し、社員が誇りを持てる場所。それが私の描く未来のオフィスです。」